畑の健康診断 土壌分析
ワインの仕込みもひと段落ついてきたので、今度は畑の健康診断です。畑は目に見えているようですが、土の中で何が起こっているのかはなかなか知ることができません。そこで大切となってくるのが土壌分析です。
土を採取
一つの畑当たり5か所(角4か所に真ん中1か所)から採取します。ブドウの根は基本的に表面から10~20㎝の場所に存在しています。そのため、10~20㎝に位置する土を採取するのです。これが案外骨が折れます。
写真はマスカット・ベーリーAの圃場の土壌です。写真映えは全くしないですね・・・・・・。この圃場は粘土質で、20㎝の深さで茶色い土が混じってきます。
なぜ土壌分析をするのか?
弊社が依頼している土壌分析は完全分析と言って、肥料の三大要素であるチッソ、リン酸、カリウムの他に、カルシウム、マグネシウム、微量要素であるマンガン、鉄、銅、亜鉛、ホウ素を計っていただけます。また、pH、腐植、塩基飽和度、リン酸吸収係数なども計測します。なぜ、そこまで細かく計測するのか?と思われるかもしれませんが、とても大切なことなのです。
人間に例えてみるとわかりやすくなります。
pH⇒人間で言えば体温です。ブドウはpH6.0~6.5の弱酸性が適正値です。
三大肥料要素要素⇒人間で言えば炭水化物、たんぱく質、脂質といったところでしょうか。
微量要素⇒こちらはミネラルで野菜等から摂取できるものでしょうか。
塩基飽和度⇒満腹感です。
もちろんブドウは3大肥料要素を最も多く必要とします。ただし、こればかり食べるのはハンバーガーだけ食べて生活するようなものです。生きることはできるかもしれませんが、果たして健康に長生きできるでしょうか・・・・・・。
有機肥料というのは聞こえも良いですが、こればかり与えてしまうとカリウム過剰やチッソ過剰となってしまうのです。
といったように、分析値は肥料を散布する際の大切な目安となります。
もう一点大切なことは、年間を通して畑での作業をする中で何が足りていて・過剰で、何が不足しているのか?を自分自身の目や舌、感覚で見つけることです。何か不足していれば葉っぱや果実に兆候が表れます。
土壌の中の主役
土の中での主役は人間の目には見ることができません。土壌に住む微生物、土壌微生物は1gの土の中に1億以上もいるとされています。日本の人口が1gの土の中に納まっていると思うとなんとも不思議な感覚ですね。地球全体の人口でも70g程度です。微生物は植物と共生していて栄養のやりとりも行っています。植物にとって最適な環境で育つことで、根から分泌される酸:根酸等を求めて微生物が集まります。微生物は植物に必要な要素を供給します(多量要素であるリン酸ですらやりとりします)。土壌の微生物圏は人間で言えば腸内フローラなのです。
もちろん微生物のことにも配慮は必要ですが、あまり傾倒しすぎることには注意が必要です。あくまで、土壌の中にも住人がいるんだよと心得ておくくらいが良いと思います。事実、リン酸を供給しなければ畑では欠乏してしまいます。
土の中にも空気が必要??
実は土の中でも空気が必要です。植物の根にとっても微生物にとっても酸素はとても重要なのです。私たちが思っているよりずっと根は酸素を要求してきます。そこで弊社では一年に一度11月中にトラクターで耕起しています。さらに、団粒といって土の中の鉱物どうしをつないで水はけがよく保水もできるという一見矛盾するような状態を作ることが大切です。これには有機物や微生物が一役買っています。話が長くなるのでここでは割愛しますが。
土壌を健全に保つとは
土壌を健全に保つとは、植物にとって最適な環境を整えると同時に、土壌微生物にとっても良い環境を整えることにつながります。ブドウにはストレスが必要だと通説がありますが、少しは必要だとしても、厳しい状況の中で果たして長生きできるでしょうか。弊社では物理的、科学的、園芸学、植物生理学を主体にしつつ、環境や微生物圏にも配慮し、そして何より現場を大切に一年の、将来のための作業を行っております。